江戸切子の文化に触れる

 
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江戸切子とは

 
江戸切子とは江戸時代後期から現在まで、江戸/東京都で生産されている切子加工をされたガラス製品の総称です。1985年に東京都指定伝統工芸品に指定、また2002年には経済産業大臣指定伝統的工芸品として認定されています。
 

 

江戸切子のはじまり

江戸時代後期、江戸大伝馬町でビードロ問屋を営む加賀屋久兵衛らが、南蛮人により持込まれた海外のガラス製品に、切子細工を施したのが「江戸切子」のはじまりといわれています。 加賀屋久兵衛発行の引き札(カタログ)には当時の扱っていたガラス製品の数々が紹介されており、食器のほか、理化学用・日用品・金魚鉢など、江戸期には多くのガラス製品の商いが行われていたことがわかります。 こうした歴史やその頃に培われた技術が、現代に至るまで「江戸切子」として伝承されています。
引き札 [びいどろ史料庫コレクション所蔵]

引き札 [びいどろ史料庫コレクション所蔵]

 

 

江戸切子の風情と技

東京・墨東地区は昔から江戸切子職人が多く集まり、ガラスの表面を削る特有の音が、下町の江戸風情をうかがわせていました。 日本人は光と影、ことに自然光の扱いに長け、太陽の光を庇や障子で和らげ室内に取り入れるという、鋭敏な感覚を備えていました。深い溝で光を屈折させ、細い線を集めて反射効果を持たせ、時には、曇りガラス状にして和らげるといった、光を知っているからこそできる技が「江戸切子」には詰まっています。
 
 

Edokiriko Design
江戸切子の伝統的紋様

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六角籠目紋

竹籠の六角網目を連続させたパターンで、魔除けとして使われた紋様です。

八角籠目紋

竹籠の八角網目を連続させたパターンで、魔除けとして使われた紋様です。

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霰(あられ)紋

地面に降る霰を図案化したもので、古くから多用された紋様です。

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魚子(ななこ)紋

細かいカット交差が、魚卵のつらなりに見えることから由来した紋様です。

 
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糸麻の葉紋

六角形を基本とした麻の葉図案は、麻の葉の成長が早い事から幼児の着物等の柄に使われる縁起の良い紋様です。

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麻の葉紋

切子の交差が麻の葉の形に見え、麻の葉の成長が早い事から幼児の着物等の柄に使われる縁起の良い紋様です。

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矢来紋

矢のように降る雨、または竹垣の交差模様に見えることから由来した紋様です。

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蜘蛛の巣紋

蜘蛛の巣を連想させる幾何学的デザインで、幸福を掴む印として使われた紋様です。

 

底菊紋

グラスの底に刻まれ、周りの切子紋様を美しく引き立てる菊紋様です。

七宝紋

円の円周を1/4ずつ重ねて繋いだ連続紋様で、円満の意味で使われる吉祥紋様です。

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市松紋

色違いの四角を交互に配置した図柄は、江戸時代の人気歌舞伎役者「佐野川市松」が愛用した紋様です。

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菊繋ぎ紋

細かいカットの交差が、不老長寿を意味する菊花に見えることから由来した紋様です。

 

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江戸切子の制作工程

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すみだ江戸切子館では、下記の工程で江戸切子を作り上げています。
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1.色被せガラス生地の制作

初めにポカンという制作手法にて、外側用に厚さの薄い色ガラスを作ります。 出来上がった色ガラスの内面に透明なガラスを吹き入れ、溶着した色被せガラス素材を作ります。不要な上部の傘部分を切り落とし、グラスに仕上げます。

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2.切子紋様の割り出し(下書き)

出来上がった色着せガラス素材に、削り出す紋様のアウトラインの線をマーカー等にて描き割り出す、という工程から江戸切子の制作作業が始まります。昔は墨付けとも呼ばれていました。

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3.削り出し作業

割り出しが済んだ後、 荒削りという削りだし作業があります。昔は金剛砂と水を使いながら、鉄製円盤で削りましたが、現在はダイヤモンドホイールにて、 荒削り・二番掛け・石掛けの作業を行い、順次、緻密で光沢のある切子紋様に仕上げていきます。 

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4.磨き作業

石掛け作業の後、一層のツヤ出しを出すため、削り出した面をさらに繊細に仕上げます。当社では、酸洗いなどの薬品による研磨加工を行わず、一つ一つ手作業にて、回転する桐製の木盤やゴム製の円盤等に磨き粉をつけ、丹念に手磨きしています。この作業が江戸切子として残された伝統的工芸の技術です。

 
 

これであなたも違いがわかる!

 江戸切子と薩摩切子の
特徴比較


江戸切子【エドキリコ】

生い立ち :
加賀屋久兵衛ら、町民による起業。

歴史:
天保年間(1831年〜1845年)より今日までの技術伝承が続いている。

切子の特徴 :
無色透明なガラスを起源として、その後、藍・紅色の厚さの薄い色ガラスを無色透明なガラスに被せ器に切子を施している。江戸風情から生み出る花鳥風月のデザインや柔らかな曲線を多用した多彩で粋な切子デザインが多い。


薩摩切子【サツマキリコ】

生い立ち :
薩摩藩主 島津斉興・斉彬二代による起業。

歴史:
弘化3年(1846年)に制作が始まり西南戦争(1877年)前後まで、約20年の間製造。1985年に復興再現。

切子の特徴 :海外の手法にみられる厚めの色ガラスを透明な色ガラスに着せている器に対し、色ガラス部分を深く切子していることにより生じる色のグラデーションの味わいがある。また、菱切子などによる直線的なデザインが多い。

 
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